中小企業の管理職研修は誰を対象者とすべきか?
対象者選定の4つのポイント
2026年06月12日

管理職研修を企画する際、多くの中小企業が悩むのが「誰を対象にすべきか」という点です。若手管理職から始めるべきか、ベテラン管理職も含めるべきか、経営陣は参加すべきか。
この判断を誤ると、結果的に研修の効果が出にくくなります。
本コラムでは、中小企業が管理職研修の対象者を考える際に押さえるべきポイントを解説します。
研修に参加させるべき人を選ぶ際の観点を知ることで、効果の出やすい研修を考えるための一助にしていただければと思います。
目次
管理職研修は「誰に受けさせるか」で効果が変わる
管理職研修を企画する際、テーマやカリキュラムに目が向きがちですが、同じくらい重要なのが「誰を対象にするか」です。
たとえば、若手管理職だけを対象に研修を実施した場合、“若手管理職”に必要な内容を集中的に学ぶことができます。
しかし、職場に戻ったときに、周囲の管理職がその内容を理解していなければ、学んだことを実践しにくくなることがあります。
管理職研修の目的は、“受講者が知識を得ること”だけではありません。学んだ内容を現場で実践し、その行動を通じて組織の状態をより良くしていくことにあります。
その目的を踏まえると、研修で学んだことを現場で実践しにくい状態は、大きな問題になります。
管理職の行動は、本人の意欲だけで変わるものではありません。上司や同僚管理職の考え方、職場の雰囲気、これまでの仕事の進め方にも影響を受けます。
そのため、研修を受けた本人が「やってみよう」と思っても、周囲から「そんなやり方では時間がかかる」「これまで通りでよい」と受け止められると、行動が定着しにくくなります。
特に中小企業では、管理職同士の距離が近く、一人ひとりの発言や行動が職場に与える影響も大きくなります。
だからこそ、研修を個人の学びだけで終わらせず、現場で実践しやすい状態をつくることが重要です。
管理職研修の対象者選定では、「誰を育てたいか」だけでなく、「研修後に組織に変化を生むためには誰が受講すべきか」という観点からも考えることが大切です。
ポイント① 若手管理職だけに限定しない
管理職研修というと、新任管理職や若手管理職を対象に考えがちです。たしかに、経験の浅い管理職は、早い段階で管理職としての基本を学ぶ必要があります。
新任管理職は、部下への指示の出し方、仕事の任せ方、注意の仕方、育成の進め方など、管理職として初めて直面する課題が多くあります。
そのため、若手管理職を研修対象にすること自体は非常に重要です。
しかし、若手管理職だけに研修を受けさせると、現場で実践する際に壁が生まれることがあります。
たとえば、若手管理職が研修で「部下に考えさせる関わり方」を学んだとします。
しかし、その上司や周囲のベテラン管理職が「そんな遠回りをせず、早く答えを教えればいい」と考えていれば、若手管理職は実践しづらくなります。
研修内容そのものが間違っていなくても、周囲の管理職が理解していなければ、職場で行動に移しにくいのです。
特に中小企業では、管理職同士の距離が近く、日常的に影響し合っています。
若手管理職が新しい関わり方を実践しようとしても、周囲の管理職が否定的であれば、その行動は続きにくくなります。
また、若手管理職だけが研修を受けると、「研修を受けた人」と「受けていない人」の間で、考え方に差が出ることもあります。
若手管理職が学んだ内容を実践しようとしても、周囲から理解されなければ、本人の意欲も下がってしまいます。
そのため、管理職研修は若手管理職だけに限定せず、可能な範囲で既存の管理職も含めて実施することが望ましいです。
特に、若手管理職に影響を与える立場の人には、仮に研修に参加できなかったとしても、研修内容を共有しておく必要があります。
ポイント② ベテラン管理職も「支援者」として巻き込む
ベテラン管理職を若手管理職と一緒に研修へ参加させることに、抵抗を感じる企業もあるかもしれません。
「ベテランにとっては知っている内容が多いのではないか」
「若手と一緒だとプライドを傷つけないか」
「今さら基本的な内容を受けてもらうのは難しいのではないか」
このような懸念は自然です。
ただし、ベテラン管理職に研修を受けてもらう目的は、単に新しい知識を学んでもらうことだけではありません。
これまでのマネジメントを振り返る機会にすること。そして、若手管理職を支援する立場になってもらうことも重要な目的です。
ベテラン管理職に研修への参加を促す場合は、「若手と同じ内容を学び直す」というよりも、「自分の経験を整理し、若手管理職を支援するために参加してほしい」と伝えると受け入れられやすくなります。
実際に、私の前職でもベテラン管理職と若手管理職が同じ研修を受けていたことがありました。
その後、管理職が集まる会議の中で、部下育成に苦労している若手管理職に対して、ベテラン管理職が「研修で言っていた、“仕事の指示は理由とセットにする”というのをやってみれば?」と声をかける場面がありました。
また、会議中に私が管理職Aさんにフィードバックをしていた際に、横でそれを見ていた管理職Bさんが「Aさん、上山さんが言っているのは、研修で言っていた“期待する役割を明確にする”という話のことだよ」と補足してくれたことがありました。
このように、同じ研修を受けていると、研修内容が共通言語になります。若手管理職だけが研修内容について理解し、実践しようと試みるのではなく、周囲のベテラン管理職が支援者になることで、管理職としての行動変化が現場で定着しやすくなります。
ベテラン管理職にとっても、若手と同じ研修に参加することで、自分の経験を振り返り、且つ経験を若手に伝えられる形に整理する機会になります。
ポイント③ シニア管理職も必要に応じて参加対象にする
シニア管理職については、「引退も見えているため、今さら研修を受けてもらう必要があるのか」と悩むことがあります。
たしかに、本人だけの成長を目的に考えると、優先順位が下がるケースもあります。
しかし、他の管理職と関わる機会があるなら、研修に参加してもらう意味は十分にあります。
理由は、研修内容を共通認識として持つことで、実践を妨げる動きを抑えるためです。
たとえば、他の管理職が研修で学んだ内容を実践しようとしたとき、シニア管理職がその考え方を理解していなければ、「そんなやり方ではうまくいかない」と否定的に受け止める場合があります。
反対に、研修内容を理解していれば、積極的に支援まではしなくても、少なくとも実践を妨げない状態をつくることができます。
シニア管理職を対象に含めるかどうかは、年齢だけで判断するのではなく、その人が組織内でどのような影響を持っているかで考えることが大切です。
ポイント④ 可能な限り経営陣も研修に参加する
管理職研修の効果を高めるうえで、経営陣の関わりは非常に重要です。
経営陣が研修に参加すると、受講者に「会社として本気で取り組んでいる」というメッセージが伝わります。
反対に、経営陣がまったく関与していないと、受講者は「一時的な研修」「人事部門だけの取り組み」と受け止めてしまうことがあります。
また、経営陣が研修内容を理解していると、研修後の会話が変わります。
たとえば、「部下に任せる」「役割を明確にする」「管理職としてチームで成果を出す」といった言葉を、経営陣と管理職が共通言語として使えるようになります。
これにより、研修で学んだ内容が現場の会話に入りやすくなります。
研修内容を管理職が実践するかどうかは、研修後の上司や経営陣がどのような言葉をかけ、どのように行動を支援するかによって、大きく左右されます。
そのため、経営陣もできるだけ研修に参加し、難しい場合でも、少なくとも研修内容を理解しておくことが望ましいです。
管理職研修を一過性の学びで終わらせないためには、経営陣が研修の外側から支えることが欠かせません。
まとめ:対象者選定は「育てたい人」だけでなく「変化を生むために必要な人」まで見る
管理職研修の対象者を考える際には、単に「誰に学ばせたいか」だけで判断しないことが重要です。
新任管理職や若手管理職は、当然ながら重要な対象です。しかし、その人たちが研修で学んだことを実践するためには、周囲のベテラン管理職、シニア管理職、経営陣の理解も必要になります。
管理職研修の対象者選定では、次の観点で考えると、自社にとって必要な参加者が見えやすくなります。
- 若手管理職に影響を与える人
- 研修後の実践を支援できる人
- 研修内容に反する行動を取りやすい人
- 経営方針と現場行動をつなぐ立場の人
- 組織内で発言力や影響力を持っている人
管理職研修は、個人のスキルアップだけを目的にするものではありません。管理職同士が同じ内容を学び、現場での実践を支え合うための土台づくりでもあります。
ですので、管理職研修を検討する際には、研修テーマやカリキュラムだけでなく、「誰を巻き込めば現場で実践されるのか」まで考えることが大切です。
このことを踏まえて研修を設計することで、自社にとって本当に意味のある管理職研修に近づいていきます。
