第4回:自分には“自分では気づけない部分がある!”を前提に、自己客観視を図る
2026年07月01日

「自分のことは、自分が一番よくわかっている」。多くの人がそう考えているでしょう。
確かに、自分の思いや考え、過去の経験からくる価値観などを、最も身近で感じているのは自分自身です。
しかし、組織での成果創出や周囲と良好な関係を築くとき、この考え方には大きな落とし穴があります。なぜなら、人は「自分が見ている自分」と「周囲から見えている自分」に、少なからずギャップがあるからです。
特に管理職やリーダーの立場になると、時にこのギャップが組織に大きな影響を与えます。
例えば部下育成において、上司本人は「丁寧に伝えているつもり」「部下のために厳しく指導しているつもり」でも、部下から見ると「話を聞いてもらえない」「否定された」と、上司の意図を正しく受け取れないケースがあります。
この場合、本人には悪意がないことが多く、むしろ「良かれと思ってやっている」ことが大半です。
そのため、自身の言動が周囲にどのような影響を与えているのかに気づきにくいのです。
だからこそ、「自分のことがわかっていない」という前提に立ち、自己客観視する力を高めることが重要になります。
目次
思い込みや固定観念が成長を止める
人は、これまでの経験を通じて、自分なりの成功パターンや判断基準をつくります。
- 「自分はこのやり方で成果を出してきた」
- 「自分が若い時はこの方法で育てられた」
- 「仕事とは厳しく指導するものだ」
こうした考え方は、経験に裏付けられた大切な財産でもあります。
しかし、一方で環境が変化したときには、成長を妨げる要因にもなります。
過去に成功した方法でも、時代や環境が変われば、かつての強みが弱みに変わることもあります。
例えば、「細かく指示を出し、管理する」ことで育った人材は、その手法が身についています。
しかし、現在のように価値観や働き方が多様化し、一人ひとりの主体性を引き出すマネジメントが求められる中、「自分が経験してきた正解」に固執すると、知らないうちに周囲、環境とのズレが生じます。
問題は、そのズレに本人が気づきにくいことです。
- 「自分は間違っていない」
- 「部下の側に問題がある」
- 「最近の若手は理解できない」
そう考えた瞬間に、成長機会は失われます。
成長とは、新しい知識を増やすことだけではありません。
自分の見方や考え方をバージョン・アップし続けることです。
そのためには、「自分の考えは本当に正しいのか」と問い直す姿勢が必要になります。
「意図」ではなく「影響」を基準に考える
自己客観視を高める上で、重要な視点があります。
それは、「自分が何を意図したか」のみならず、「相手にどのような影響を与えたか」を基準に考えることです。
例えば、部下に対して「期待しているから厳しく言った」という上司がいます。
しかし、部下が「自分は否定されている」と感じているのであれば、そこにはコミュニケーション上の問題があります。
もちろん、上司の意図は大切です。しかし、組織において重要なのは、意図だけではなく、その結果として相手にどのような行動や感情の変化を生み出したかです。
- 「自分は伝えた」
- 「自分は説明した」
- 「自分は気遣った」
と同時に、
- 「相手にはどう伝わったのか」
- 「相手はどう受け止めたのか」
- 「相手の行動は変化したのか」
という視点を持つことが必要です。
これは、決して相手の評価ばかりを気にするということではありません。
自分の影響力を正しく理解し、より効果的な行動につなげるための考え方です。
成長する人は“自分を見るもう一人の自分”を持っている
自己客観視が高い人は、まるで第三者が自分を見るように、自分の言動や感情を観察することができます
- 「今、自分は感情的になっていないか」
- 「自分の発言は相手にどのように聞こえるだろうか」
- 「以前と同じ考え方に固執していないだろうか」
このように、自分自身に問いを投げかける習慣があります。
一方で、自己客観視が不足すると、自分の経験や価値観だけを基準に判断してしまいがちです。
結果、周囲との認識のズレが広がり、本人は努力しているのに成果につながらないという状況が起こります。
他者からのフィードバックで気づきを得る
もう一つ、切り口を変えてみましょう。それは「他者から自分はどう見えているのか?」を確認することです。
「目は他人を見るために付いている」という言葉がありますが、逆に言えば自分を見る目は付いていない…要は自分では自分を見ることができないため、わからないという訳です。
そう考えると、“自分が気づいていない自分の姿”を他者からのフィードバックしてもらえれば、自分の姿を知ることができます。
時には自分が受け入れにくい内容もあるでしょうが、その気づきこそが成長のきっかけになります。
その代表的な方法の一つに「360度評価」があります。
専用ツールを用いて上司や部下など身近な他者に自分を評価してもらい、その結果を本人にフィードバックするという手法です。
他者目線での意見が得られるため、自己客観視には非常に適しています。
このような取り組みも、自分を知るための有効な方法と言えるでしょう。
成長を妨げるのは能力不足ではなく、自分自身への思い込みかもしれません。
そして、成長する人材は、自分には見えていない未熟な部分を受け入れ、学び続けています。
「自分のことは、まだ十分にはわかっていない」。この謙虚な姿勢が、固定観念を乗り越え、新たな可能性を広げる第一歩になるのではないでしょうか。
