後継者はいる。でも後継経営陣はいない
2026年07月13日

目次
後継者がいるだけでは、会社は引き継げない
中堅・中小企業の事業承継において、創業家のご子息、社内で実績を積んできた役員、あるいは外部から招いた経営人材など、次の社長候補が明確になっている会社は多いでしょう。
しかし、本当にそれだけで会社は引き継げるのでしょうか。
事業承継で見落とされがちなのは、「後継者個人」の問題ではなく、「後継経営陣」の問題です。
後継者はいても、その後継者を支え、共に会社の未来を考え、部門を越えて経営課題に向き合える幹部人材が育っていない。
こうした状態のまま承継が進むと、新社長は就任直後から孤独な経営を強いられることになります。
役職者はいても、経営陣が育っていない
多くの中堅・中小企業には、優秀な部門長や管理職がいます。
営業に強い人、生産現場をよく知る人、長年会社を支えてきたベテラン社員もいます。
ところが、その人たちが必ずしも「経営人材」として機能しているとは限りません。
自部門の業績には責任を持つが、会社全体の収益構造までは考えない。
目の前の問題には対応するが、3年後、5年後を見据えた打ち手までは考えない。
社長から指示されれば動くが、自ら経営課題を見つけ、周囲を巻き込み、実行まで進めることは少ない。
この状態では、役職者はいても、経営陣は育っていないと言えます。
後継経営陣は、なぜ自然に育たないのか
では、なぜ後継経営陣は自然に育たないのでしょうか。
大きな理由は、日常業務の延長線上だけでは、経営の視点や判断力が身につきにくいからです。
中堅・中小企業では、管理職自身もプレイヤー業務を多く抱えています。
日々の売上、納期、品質、人員対応に追われ、全社視点で考える時間も機会も限られています。
また、これまで社長が強いリーダーシップで会社を引っ張ってきた企業ほど、重要な判断は社長に集中しがちです。
幹部は社長の意向を確認してから動く。
難しい案件は社長が決める。
結果として、幹部が経営判断を経験する場が少なくなります。
そのまま承継期を迎えると、後継者だけが前に立ち、周囲の幹部は従来どおり「担当部門の責任者」にとどまってしまいます。
これでは、後継者の負担は大きくなるばかりです。
必要なのは、経営経験の前倒しである
これからの事業承継で必要なのは、後継者教育だけではありません。次の経営を担う幹部層に、経営経験を前倒しで積ませることです。
たとえば、中期経営計画づくりに参画させる。
収益改善や新規事業、組織改革などの重要テーマを任せる。
部門横断のプロジェクトを通じて、全社最適で考える経験を積ませる。
財務数値を読み、自部門の成果だけでなく、会社全体への影響を考えさせる。
こうした実践の場を通じて、幹部は少しずつ「管理職」から「経営人材」へと変わっていきます。
任せるだけでなく、経営の判断軸を共有する
もちろん、任せるだけでは十分ではありません。
社長や現経営陣が、自社の歴史、判断基準、大切にしてきた価値観、今後の方向性を丁寧に伝えることも重要です。
後継経営陣づくりとは、単に仕事を振ることではなく、会社の未来を考える土台を共有し、経営の視座を引き上げていく取り組みです。
後継者育成から、後継経営陣づくりへ
事業承継とは、社長の椅子を次の人に渡すことだけではありません。次の時代を担う経営チームをつくることです。
後継者はいる。でも、後継経営陣はいない。
もし自社がその状態にあるなら、今から取り組むべきことは明確です。
後継者を孤立させないために、次の経営を共に担える幹部を計画的に育てること。
経営人材育成は、人事部門だけのテーマではなく、会社の未来を左右する重要な経営課題なのです。
