大手企業と同じではいけない!“中小企業に適した”管理職研修の在り方とは?(後編)
2026年06月08日

管理職研修を企画する際、多くの企業が参考にするのは大手企業の研修事例です。しかし、中小企業と大手企業では、管理職を取り巻く環境が大きく異なります。
前編では、「管理職の選任の仕組み」「研修を実践で活かす経験値」「研修に対する捉え方」という3つの観点から、中小企業に適した管理職研修の在り方について整理しました。
後編となる今回は、「管理職としてのロールモデルの不在」と「プレイヤー業務の多さ」という、中小企業で特に起こりやすい2つの課題をテーマに、中小企業に適した管理職研修についてさらに深掘りしていきます。
目次
1. 前編の振り返り
前編(https://kanri-syoku.com/point/1979/)では、
大手企業と中小企業では、「管理職になる背景」「研修活用の経験」「研修に対する価値観」が大きく異なることをお伝えしました。
そのため中小企業の管理職研修では、
- 研修への納得感を作る
- 現場で実践できる形に落とし込む
- 「教わる場」ではなく「考える場」にする
といった工夫が重要になる、という内容でした。
今回はその続きとして、「管理職としてのロールモデルの不在」と「プレイヤー業務の多さ」という観点から、中小企業に適した管理職研修について整理していきます。
2. なぜ大手企業にはロールモデルが生まれやすいのか
前編で解説したように、大手企業と中小企業では、管理職の選任の仕組みが大きく異なります。
大手企業では、複数の候補者の中から成果を出した人材が管理職へ昇進していきます。
また、管理職教育の仕組みも比較的整備されているため、管理職の間で「管理職にはこういう役割が必要」という共通認識が形成されやすい環境があります。
つまり大手企業では、“管理職のロールモデル”が組織内に存在しやすいのです。
3. 中小企業で“昔ながらのマネジメント”が繰り返される理由
一方、中小企業では、現場で成果を出していた人が、「現場をよく知っているから」「他に任せられる人がいないから」という理由で管理職になるケースが多くあります。
もちろん、現場で成果を出してきたこと自体は非常に重要です。
しかし問題なのは、“管理職としての役割”を整理する機会が少ないことです。
つまり、「管理職とは何をする役割なのか」が曖昧なまま管理職となるということです。
こうしたゴールが曖昧な状態では、「何をもって管理職として成果を出すのか」が分からないため、多くの人は、自分が最も成果を出せていた“プレイヤー時代のやり方”を基準に行動しやすくなります。
例えば、
- 仕事を部下に任せない
- 育成より目の前の業務を優先する
- 部下が考える前に答えを出してしまう
といった行動です。
もちろん、本人は責任感を持って現場を支えているケースがほとんどです。
しかし、この状態が続くと、部下育成や権限移譲が進まず、管理職自身への業務集中や疲弊につながっていきます。
さらに、“プレイヤー感覚のまま管理職になった人が、次の管理職を育てる”という悪循環が生まれてしまうのです。
4. 研修の中で管理職の役割について整理する
本来、管理職には、
- 部下の力を引き出し、チームとして成果を生み出す
- 上下間や部門間の結節点となり、全体最適を推進する
- 上位者とのパートナーシップを築き、共通の目的を実現する
といった役割が求められます。
しかし中小企業では、管理職のロールモデルが少ないため、こうした役割そのものを十分に認識できていないケースも少なくありません。
そのため、中小企業の管理職研修では、単にマネジメントスキルやコミュニケーション技法を教えるだけでは不十分です。
まずは、
- 一般社員と管理職では、成果の出し方がどう違うのか
- なぜ部下育成が必要なのか
- なぜ“自分でやる”だけでは組織が回らなくなるのか
といった、「管理職とは何を担う役割なのか」を整理する時間を、十分に確保する必要があります。
5. プレイヤー業務の多い管理職が抱える問題
中小企業では、人手不足や組織規模の問題に加え、「この人しかできない」という業務の属人化によって、管理職のプレイヤー比率が高い傾向があります。
いわゆるプレイングマネージャーで「管理職でありながら、自分自身も現場の主戦力」という状態に置かれています。
例えば、プレイングマネージャーには、
- 常に時間に追われている
- 目の前の業務対応に追われる
- 長期的なことを考える余裕がない
- 研修中も現場のことが頭から離れない
といった特徴があります。
こうした状態では、
- 研修内容を実践する時間がない
- 即効性のない取り組みに意欲がわきにくい
- 研修中も業務が気になり集中しにくい
といった問題が起こりやすくなります。
6. プレイングマネージャーの特徴を踏まえた研修の工夫
では、このような特徴を持つ管理職に対して、研修はどのように設計する必要があるのでしょうか。
- 研修後の取り組みを研修中に“詳細まで”決めておく
プレイングマネージャーはその忙しさから、現場に戻った後に研修について振り替える時間を取ることが困難である場合があります。
そのため、研修内容の実践や、報告書の作成など研修後に必要な取り組みについては、研修中に、「いつやるか」「どのような方法でやるか」など5W1Hの観点で整理をしておきます。
人は曖昧なことには取り組みにくいという特徴があります。詳細まで具体的に決めておくことで、忙しい中でも取り組みが容易になります。
- 実践方法は短時間で成果を出せるものに限定する
研修の内容について役立つことが多かった場合、モチベーションが高まり、たくさんの実践計画を立てる人がいます。
しかし、現場に戻ると元々の忙しさに加え、さらに手間のかかる実践を行うことになり、結局研修内容が活かされずに終わる人が大半です。
そのため、1度の実践は短時間で行えるものに絞って計画を立てることが重要です。
例えば、
- 1日3分だけ部下と雑談をする
- 指示の際に理由を一言添える
- 説明が短時間で終わるような一部の仕事だけ任せてみる
など、現場負荷が少なく、すぐ実践できる内容から始める必要があります。
限られた時間と余力の中でも、“現実的に実践できる内容”まで落とし込むことが、研修効果を高めるために重要なのです。
7. まとめ
前編・後編を通じて見てきたように、中小企業と大手企業では、管理職を取り巻く環境が大きく異なります。
まとめると、大手企業と、中小企業では以下のような差があります
- 研修に対する動機付けの差
- 研修を実践で活かすことについての経験値の差
- “研修から学ぶ”ことに対する捉え方の差
- ロールモデルとなる管理職の差
- プレイヤー業務の割合の差
そのため、よく見聞きするような大手企業向けの研修をそのまま導入しても、同じような成果が出るとは限りません。
管理職研修の内容が現場で実践され、成果につながるためには、このコラムにあるような中小企業の特徴を踏まえた内容にすること。
そして、自社の管理職がどのような環境で働き、どのような悩みを抱えているのか。その現実を踏まえて設計することが重要となります。
