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優秀なプレーヤーがなぜ管理職になれば苦しむのか? ~中小企業に管理職研修が必要な理由と管理職に向いている研修の種類~

2026年06月01日

優秀なプレーヤーがなぜ管理職になれば苦しむのか? ~中小企業に管理職研修が必要な理由と管理職に向いている研修の種類~

「管理職が育たない」
これは、多くの中堅・中小企業で共通して聞かれる悩みです。

現場で成果を出していた社員を昇進させたものの、部下育成がうまくいかない、チームがまとまらない、管理職本人が疲弊している、部署によって成果や雰囲気に差が出る。
こうした状況に頭を悩ませている企業は少なくありません。

なぜ、管理職の育成はこれほど難しいのでしょうか。
それは、一般職から管理職に求められる役割の変化が、単なるスキルアップで対応できるものはないからです。
管理職に求められるのは、「OS(基本ソフト)の入れ替え」に近い変化です。

これまで成果を出してきた仕事観や価値観を、一度大きく転換しなければならない。
だからこそ、多くの人が戸惑い、苦しみ、行き詰まります。

本コラムでは、そもそも管理職とはどのような役割なのか、なぜ管理職研修が必要なのか、そして管理職を育てるための研修にはどのようなものがあるのかについて整理していきます。

1.管理職の役割とは

管理職に求められる役割は、非常に多面的です。
例えば管理職には、

  • 組織を引っ張るリーダー
  • 経営陣への提言を通じて経営に貢献するフォロワー
  • 経営陣と現場、部署間をつなぐコーディネーター
  • 現場実務を担うプレイヤー

といった複数の役割が同時に求められます。

特に中小企業では、人手不足の理由から、管理職一人ひとりに求められる役割範囲が広くなる傾向があります。
現場対応を行いながら、部下育成や部署間調整も担うなど、期待される役割は多岐にわたります。

ここで重要なのは、管理職の仕事は「自分が成果を出すこと」ではないという点です。
もちろん、自ら動く場面もあります。しかし本質は、「組織として成果を出すこと」にあります。

例えば、

  • 部下が動きやすい環境を整える
  • チームの方向性を示す
  • 部下の成長を支援する
  • 部署間の利害調整を行う
  • 問題を未然に防ぐ

こうした働きかけによって、組織全体の成果を高めることが求められます。
つまり管理職とは、「自分が頑張る人」ではなく、「周囲が力を発揮できる状態を作る人」なのです。

ここを理解しないまま管理職になると、「自分で抱え込む」「部下に任せられない」「細かく業務を管理しすぎる」といった状態に陥りやすくなります。
結果として、管理職本人も疲弊し、部下も育たないという悪循環が起きてしまいます。

2.管理職研修が必要な理由①

管理職の役割遂行のためには、大きな変化が求められるため

 多くの人が陥る罠があります。それは、
「優秀なプレーヤーが、そのまま頑張れば良い管理職になれる」
という考え方です。

一般職から中堅社員への成長は、「専門知識」や「処理スピード」を高めることで対応できます。
しかし、管理職になる時には、仕事の前提そのものを変える必要があります。

例えば、プレーヤー時代は、「自分がどれだけ成果を出すか」が重要でした。
しかし管理職になると、「他者の成果を通じて、どう組織へ貢献するか」が重要になります。

実際にあったお話ですが、プレーヤーとして非常に優秀であったために管理職へ昇進した人がいました。

その人は、業務指示は的確で、仕事のスピードも速いタイプでした。
しかし一方で、「自分にできることは、他の人にもできるはずだ」という感覚を強く持っていました。
そのため、上手くできない部下に対して、「単にやる気が足りない」と捉えてしまっていたのです。

結果として、皆の前で部下を強く叱責する場面も増え、部署全体の雰囲気が悪化していきました。

本人に悪気があったわけではありません。
むしろ、「成果を出さなければならない」という責任感は強かったのです。

しかし、「自分が頑張って成果を出す」というプレーヤー時代の感覚のままマネジメントを行ったことで、「周囲が力を発揮できる状態を作る」という管理職に求められる役割を遂行していませんでした。

また、時間の使い方も大きく変わります。
管理職からよく聞かれるのが、「マネジメントの時間が取れない」という言葉です。
しかし、部下との対話や指導、部署間調整などのマネジメントに時間を割くことが、管理職の“本来の仕事”です。

つまり、「自分が動くこと」を減らすことで時間を生み出し、「組織が動く状態を作ること」に時間を割くように、仕事の取り組み方を変えなければいけないのです。

さらに、求められるスキルも変わります。
専門知識を活かして自分で成果を出す力だけではなく、

  • 部下との信頼関係を築く力
  • チーム全体を見渡して判断する力
  • 問題の原因を整理し、周囲を巻き込みながら解決する力

が重要になります。

このように、管理職になると複数の面から大きな変化を求められます。
しかし、プレーヤーとして努力して成果を出してきた人ほど、「自分が頑張って成果を出す」という感覚が無意識に強く刷り込まれています。

だからこそ、自分自身だけでその考え方を変えることは簡単ではありません。
そのため、研修によって、「今までの成功パターンでは管理職として通用しない」という気づきを得ることが重要になるのです。

3.管理職研修が必要な理由②

管理職は、企業経営のカギを握る存在であるため

管理職は、経営と現場をつなぐ“結節点”です。

経営方針を現場へ伝えるのも管理職。
現場の課題を経営へ上げるのも管理職。
部下の日々の仕事に最も近い距離で関わるのも管理職です。

つまり、管理職は「経営」と「現場」の間に立ちながら、組織全体へ影響を与える存在なのです。

特に中小企業では、制度や仕組みよりも、「誰がマネジメントしているか」によって、組織状態が左右されやすく、一人の管理職の影響力がさらに大きくなります。
前職を思い出してみても、若い人が意見を言いやすい部署もあれば上司の様子をうかがう部署もあり、業務が終わると、会話もせずに各自すぐに帰る部署もあれば、雑談の多い部署もありました。

こうした違いは、偶然生まれているわけではありません。
多くの場合、その部署の管理職の考え方や関わり方が、職場の空気として反映されているのです。

例えば、

  • 部下が安心して発言できるか
  • 問題を早期に共有できるか
  • 挑戦を歓迎する空気があるか
  • 部署間で協力し合えるか

こうした職場の空気は、日々の管理職の関わり方によって形成されていきます。

一方で、管理職の関わり方次第では、

  • 部下が萎縮する
  • 報告が上がらなくなる
  • 部署間対立が起きる
  • 離職が増える

といった問題も起こります。

つまり管理職とは、単に業務を回す存在ではありません。
組織の空気を作り、現場の行動を変え、企業全体へ影響を与える、企業経営のカギを握る存在なのです。

だからこそ、管理職の役割や関わり方を個人任せにするのではなく、企業として一定の方向性を共有する必要があります。
そのために、管理職研修が重要になるのです。

4.管理職研修が必要な理由③

管理職は、経験だけでは十分に育たないため

 「管理職なんて、現場で苦労していればそのうち身につくものだ」
そう考える企業もあります。

しかし実際には、同じタイミングで管理職になって10年経過した人の間でも、管理職としての力量に大きな差がある場合があります。

その差の背景には、「何を参考に管理職を学んできたか」の違いがあります。
管理職は、営業や経理のように、「これが正解」という型が見えにくい役割です。
しかも中小企業では、体系的な管理職教育が行われていないケースも多く、「見て学ぶ」「経験で覚える」という形になりがちです。

その結果、多くの人は、「自分が過去にされてきたマネジメント」を参考にします。
しかし現在では、若手社員の価値観、働き方、組織環境が大きく変化した結果、「過去のマネジメントのやり方ではいけない」と、口にする経営者が非常に多いです。

つまり、過去の経験をそのまま踏襲するだけでは、現在の管理職として十分ではないケースが増えているのです。
だからこそ管理職には、体系的に学び直す機会が必要になります。

研修では、

  • 現在の管理職に求められる役割
  • 現代の部下育成の考え方
  • 他社のマネジメント事例

などを学ぶことができます。
つまり研修とは、単なる知識習得ではなく、「過去を踏襲したマネジメント」から脱却するための場でもあるのです。

5.管理職を育成するための研修にはどのようなものがあるのか

 それでは、管理職研修にはどのような種類があるのでしょうか。
代表的な研修テーマと、対応する組織課題の一例を見ていきましょう。

代表的な研修テーマと組織課題の一例
カテゴリ対応する組織課題研修テーマ
組織運営あるべき姿が見えない、管理職としての成長が見られない管理職の役割認識
部下が受け身、一体感がない、現場が動かないリーダーシップ
発言が少ない、改善提案が出ない心理的安全性
部署間対立、情報共有不足部門間連携
管理職が抱え込みすぎる、プレイヤー化している権限委譲
育成・評価管理職によって育成力に差がある、若手が育たない部下育成
指示待ち社員が多い、自主性が乏しいコーチング
評価への不満、部下が成長しないフィードバック
評価基準がバラバラ、不公平感がある評価者
目標が曖昧、行動につながらない目標設定
思考スキル説明が伝わらない、判断が曖昧ロジカルシンキング
改善提案があがらないクリティカルシンキング
同じ問題が繰り返される、原因分析が弱い問題解決
労務・ハラスメントパワハラリスク、職場トラブルハラスメント防止
長時間労働、休職者増加労務管理
管理職疲弊、離職増加メンタルヘルス
不正リスク、ルール軽視コンプライアンス
経営管理部門最適、経営視点不足経営視点強化
数字意識不足、進捗管理が弱いKPI管理
利益意識不足、採算感覚が弱い管理会計

管理職研修は、大きく分けると以下の5カテゴリに整理できます。

組織運営系

組織運営系では、「チームをどう動かすか」を扱います。
管理職の役割認識、リーダーシップ、心理的安全性、部門間連携、権限委譲などが代表例です。
「現場に一体感がない」「管理職が抱え込みすぎる」といった課題と関係しやすいカテゴリです。

育成・評価系

育成・評価系では、「部下をどう育てるか」を扱います。
部下育成、コーチング、フィードバック、評価者研修などが含まれます。
「若手が育たない」「評価への不満が多い」といった課題と関係しやすいカテゴリです。

思考スキル系

思考スキル系では、「管理職としてどう考え、判断するか」を扱います。
ロジカルシンキング、クリティカルシンキング、問題解決などが代表例です。
「同じ問題が繰り返される」「考えが人に伝わりにくい」といった課題に繋がりやすいカテゴリです。

労務・ハラスメント系

労務・ハラスメント系では、「安心して働ける職場をどう維持するか」を扱います。
ハラスメント防止、労務管理、メンタルヘルスなどが含まれます。
管理職の言動が、離職や職場トラブルに直結するため、重要性が高まっています。

経営管理系

経営管理系では、「経営視点を持った管理職を育成すること」を扱います。
KPI管理、管理会計、経営視点強化などが代表例です。
「部門最適」「数字意識不足」といった課題と関係しやすいカテゴリです。

6.管理職研修をどのように選べばよいのか

 ここまで、管理職の役割や、なぜ管理職研修が必要なのかについて整理してきました。

次に考えたいのが、管理職研修をどのように選ぶかということです。
多くの企業は、「何の研修をやるべきか」から考え始めます。
しかし、本来先に整理すべきなのは、「なぜ今の問題が起きているのか」です。

例えば、「若手が定着しない」という課題一つ取っても、

  • 上司との関係性に問題があるのか
  • 育成文化が弱いのか
  • 管理職がプレーヤー業務で手一杯なのか

によって、必要な研修は変わります。
つまり、表面的な問題だけで研修テーマを決めると、本当に必要なテーマとズレる可能性があるのです。

また、本コラムでもお伝えした通り、管理職育成では、

  • OSの転換が必要であること
  • 管理職が組織へ与える影響が大きいこと
  • 経験だけでは過去を踏襲したマネジメントになりやすいこと

を踏まえる必要があります。

そのため、「知識を教えるだけ」の研修ではなく、管理職としての役割認識を変え、現場での行動変化に繋げる視点が重要になります。
なお、管理職に求められる役割については、こちらのコラムでも詳しく整理しています。
管理職に求められる役割とは?

管理職研修は、実施すること自体が目的ではありません。
管理職の行動が変わり、その結果として組織が変わることが目的です。

だからこそ、「どの研修が人気か」ではなく、「自社の管理職にどのような変化が必要なのか」という観点から考えることが重要なのです。

この記事の監修・筆者

上山琢真
上山琢真人材開発部 コンサルタント

前職では上場企業にて役員を務め、事業拡大フェーズにおいて、アジア地域の海外拠点の運営・マネジメントを担うなど、成長組織のマネジメントを幅広く経験。
また、社員数4名から200名規模へと急成長する企業において、事業と組織の両面から成長を支援する中で、人の活性化こそが組織パフォーマンスと収益性を高める源泉であることを実感する。
現在は、これまでの経験を基に「個が力を発揮できる環境づくり」をテーマに、組織・人材開発の支援に取り組んでいる。

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